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since 2008/9/17 ネットの片隅で妄想全開の小説を書いています。ファンタジー大好き、頭の中までファンタジーな残念な人妻。 荻原規子、上橋菜穂子、小野不由美 ←わたしの神様。 『小説家になろう』というサイトで主に活動中(時々休業することもある) 連載中:『神狩り』→和風ファンタジー 連載中:『マリアベルの迷宮』→異世界ファンタジー 完結済:『お探しの聖女は見つかりませんでした。』→R18 恋愛ファンタジー 完結済:『悪戯なチェリー☆』→恋愛(現代) 完結済:『花冠の誓いを』→童話 完結済:『変態至上主義!』→コメディー
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別の世界に旅立っちゃうんだぜ

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 天の底が抜けたのではないかと思うほど激しい雨が、鉄格子を打ち付けている。僅かな隙間から空を仰げば暗雲が立ち込め、時折青白い稲光が閃いていた。  
 アグリア騎士団の牢獄には何度も出入りしているが、自らが入ったのは初めてのことだ。薄暗い牢の中に明かりはなく、唯一の灯は、回廊の燭台のみ。雨漏りが酷く、そこここに雫が垂れてくる。石造りの牢内には湿った空気が立ち込めていて、不快だ。
 上官を告発してから三日。およそ清潔とは言えないようなこの場所でやることと言えば、腹筋か腕立て伏せ、もしくは逆立ちでの懸垂くらいである。正直、暇を持て余している。ヴァレリーに頼んで、酒でも持ってきてもらえばよかっただろうか。いや、彼はこんな場所には寄りつくはずもない。私が女ならば、頼めば喜んで酒でも何でも持ってきたかもしれないが。(あいつは今頃、ドラゴンの背中の上で青ざめた顔でいるのだろう。奴は、ドラゴンに乗らない方が確実に強いと思う。)  
 幸い、この手帳だけは没収されずに済んだ。身元を改めたのがバルトサール卿で助かった。碌に体も触らずに、得物だけ取り上げて牢に押し込められた時は、その適当さにむしろ呆れた。もしクラウディア殿であったら、きっとこうはいかなかっただろう。  
 私は明朝、公の場で裁かれる。そこで私の処遇は決定されることだろう。
 どんな処罰だろうが、ヴィオラを無為に喪ったこと以上の絶望はないだろう。そう考えると、不思議と心は凪いで、今はとても穏やかな気持ちだ。あの時はあれほど、憎くて、殺してやりたくてたまらなかった上官殿だが、今となってはあの豚野郎がどうなろうと関係ないとさえ思えてくる。  許したわけではない。絶対に許さない。
 公の場であの豚野郎の罪を全て晒してやるつもりだ。  
 法廷に立つその前に、ありのままを綴っておきたい。誰でもいい、この手記を読んだ貴方に、あの時の作戦の全容を、包み隠さず伝えよう。願わくば、もう二度と、このようなことが起こらないことを切に願って。

 自分で言うのもおかしなものだが、騎士団に入団した当初より、私は期待の新人として、周囲からもてはやされていた。代々エルロンド家は多くの騎士を排出し、兄も父も私も、例に洩れずに騎士となった。兄は医療班の部隊長、父は騎士長を務めるほど、実力も兼ね備えている。  
 一方で私は、十六で騎士団に入団し、次の年には中級騎士に昇格していた。彗星の如き速さで昇格したレダやヴァレリーほどではないが、私も順調に、輝かしい出世の道を歩んでいた。  中級騎士になるやいなや、幼いころより共に育った、ヴィオラをパートナーに、私は幾多もの戦場を駆けた。ヴィオラはとても賢いドラゴンで、一を言えば十を理解してくれた。もはや、半身とも呼ぶべき存在であったかもしれない。陽気な子で、私がヴァイオリンを弾くと、よくそれに合わせて唄を歌っていたな。
――ドラゴンは道具、その考えは間違ってはいないのかもしれない。確かにドラゴンは強力な兵器である。しかし生死の境をともに行くパートナーが、ただの道具であるはずはない。アグリアの考えに疑問はあれど、実力を認められるこの国において、私は特に不満を持っていなかった。ただ、ドラゴンの扱いに関しては、意見が多少食い違っただけのこと……。声に出して言うべきことでもないと考えていた――  
 ヴィオラは、アグリア騎士団の中で最速飛行を誇るドラゴンだった。その翼で、私は何度もイグニアへ強襲した。  

私の功績をどこかで聞きつけた、ぶくぶくと肥えた豚のようなあのクソ上官が、声を掛けてきたのはいつだったか。  
 そう、丁度、上級騎士への昇格の話が持ち上がっていた時のことだった。
 奴は奇襲部隊の隊長を務めていた。そんな重たい体で、どうやって奇襲するのか謎だったが、元々、狡猾で卑怯な作戦ばかりを立案し、正面からの激突は極力避けたがるような奴だった。それを否定するつもりはないが、私は奴が嫌いだ。自分は決して前線に出ることはせず、指揮は遠く離れた陣地から、伝令を飛ばして伝える。私もよく、ヴィオラの速さを買われ、伝令に使われたことがあるが、とにかく、全てが胸糞悪かった。自分の失敗をよく部下に擦り付け、それで上手く手柄を立て、這い上がってきたという噂だ。
  しかも奴は、騎士ではなく、対竜矢に毒を塗り、それでドラゴンを狙わせ翼を折り、地面に叩きつけるといった作戦を好んで使用していた。弓もそれなりに扱うことのできる私も、その作戦に駆り出されたが、到底気分の良いものではなかった。上空から落ちた騎士は大抵が死亡するか、再起不能の重傷を負うかのどちらかであろう。中には、奇跡的に助かる猛者もいるかもしれないが、それはほんの一握りの、奇跡を掴んだ者たちだ。  
 だが、中級騎士の私に、部隊を好きに選べる権利などない。元々別の隊に所属していたが、突如、奴の部隊へ引き抜かれたのだ。
 そんな部隊長殿に、ある日自室に呼び出される。夏真っ盛りであるにも拘わらず、窓もカーテンも閉め切られていることに違和感を感じた。巨体には汗が滲み、部屋の中は異様なほどの湿気と熱気に包まれていた。私はアグリアの騎士団服のデザインを大変気に入っているのだが、目の前の上官殿は、はち切れて裸になるのではないかと心配するほど、ぱっつんとした団服を着ていた。豚は何を着ても、所詮は豚だ。
 私は暑苦しさに思わず襟元を緩め、苦い顔をした。しかしそんな私のサインにも特に気付かず、――どれだけ鈍いのか、と鼻で笑ってしまった――部隊長殿は妙に重々しく切り出した。
「君に重要な任務を与える。説明が終わり次第、直ちに作戦を開始せよ。なお、これは騎士団でも最重要事項の、極秘の任務だ。決して口外はしないように」
「はっ」
 従順に返す私に、奴は満足げに頷いた。
「よろしい。では任務の概要を説明する。これを見たまえ」  
 そう言って、奴は机上に、一枚の紙を広げた。  鼻下から伸びた髭を撫でつけて、何をもったいぶらせて出すのかと思えば。
  イグニアとアグリア、そこを隔てるように聳える霊峰フィアフィル。イスタール島の地図だった。その地図上に、赤い丸で印がされている。その印がされている地点は、イスタールでも有数の湿地帯であった。滅多なことで人が踏み入ることのない場所に、一体何の任務があるというのか、その時の私には見当もつかなかった。  言われるがままに、広げられた地図を見る。奴は、地図の印を指さしながら、説明を始めた。
 「今回の任務は、物資の回収だ。この付近に、目的の物資が隔離されている廃墟がある。丁度、湿地帯の中央から南に走るこの辺りだ。ここへ到達するまでの間に、イグニア騎士団との遭遇も予測されるが、できる限り戦闘は控え、物資の回収、及び運搬を最優先事項とせよ。回収した物資は、直ちにこの拠点に届けるのだ。目標物は、両手で抱えられるほどの大きさの、丸い容器だ。途中、決して敵側に渡してはならない。無用な刺激も加えてはならない」
 そのような場所に、廃墟があるなど初めて聞いたが。  
 そもそも、この時は、別の拠点でイグニア軍との激戦が繰り広げられていた。イグニアの砦を攻めたは良いが、得意の持久戦に持ち込まれたのだ。長らく膠着状態が続いていたが、夜間、本隊へ奇襲を掛けられ状況は一転、不利な状況に追い込まれつつあった。戦闘狂のバルトサール卿がいてあの状況だ。相当、厳しいのだろう。  悠長に物資の回収などしている場合なのか、それとも、その物資が戦況を左右する重要なものであるのか……。所詮、中級騎士の私には分かるはずもないことである。
   私は訝しみながらも、頷いた。
「この廃墟の辺りには、有害な霧が発生するとの報告もある。現地へ向かう時は、このマスクをしていけ」
 顔全体が、すっぽりと覆われる、物々しいマスクを渡され、私はますます訳が分からなかった。
「これが成功したあかつきには、君は晴れて上級騎士だ。そして、私も騎士長への昇格がかかっている。失敗は許されぬぞ」
 結局この豚野郎は、自らの昇進のことしか考えていなかったらしい。こんな奴の為に働かねばならないのかと思うと、正直気が滅入って仕方なかった。  しかし、命令である以上、行かねばならない。私は誰にも詳細を告げず、その日の夕刻、暗がりに紛れて飛び立った。

 ヴィオラの飛行能力では、湿地帯まで半日かかった。目的の廃墟を探すのに些か時間がかかったが、それは、湿地帯の緑に包まれ、ひっそりと佇んでいた。想像していたよりも大きな施設だ。長らく人が踏みいっていないのか、廃墟の入口は蔦がびっしりと絡みつき、ヴィオラのブレスでなければ払えなかった。  
 ヴィオラを外で待機させ、薄暗い廃墟をカンテラ片手に進み、私はその異様さに、次第に吐き気を覚えた。息苦しいマスクのせいもあったかもしれない。  
 最初は、放棄された拠点だろうと考えていた。しかし、中に入り込むたびその可能性は棄却される。
 床に転がるフラスコ、割れた試験管。飛び散った硝子の破片。それから、古い血痕が天井と壁にこびりついている。扉をひとつひとつあけ、部屋を確認していく度に、ドラゴンの四肢、頭部、胴体、そしてドラゴンのミイラがそれぞれ見つかった。
 最後の部屋の扉に辿りつく頃には、この施設が何かの研究所であったのだという確信を持っていた。  
 ただ、何の施設かは知らない。ドラゴンの死骸があることから、ドラゴンの生態の研究をしていたのだろうと、私は漠然と予測していた。  そして、私は、遂に最後の部屋の扉を開いた。  私は思わず、眩しさに目を眇めた。  

 そこは、今までの景色とは打って変わって、実に清潔な部屋であった。壁と床は白一色、あちこち散乱し、崩壊しかけていた同じ廃墟の中とは思えないほど、整理整頓されている。  
 誰かが出入りしたのか?  
 いや、入口に絡まった蔦は、一日二日で生えるようなものでもない。私以外の足跡も見つからなかったし、扉は全て、埃をかぶったままだった。そうなると、この部屋のみ、清潔さを維持できるような何か特別な仕掛けでもあるのだろうか?  
疑問を抱きつつも、私は部屋の中央に安置されていた、目標物を確認すると、そっとそれを持ち上げた。  
 驚くほど軽い。  
 中に何が入っているのかわからないが、これを慎重に運ぶことが、与えられた任務だ。  
 私はその物資を外に運び出し、ヴィオラに乗ってすぐさま指定された拠点へと急いだ。何故かヴィオラは、元気がない様子だったが、それも連続飛行の疲れのせいだろうと判断し、私はそのままヴィオラを飛ばせた。  
 空から望む戦場は、一進一退の攻防を繰り返していた。長期の戦いのためか、両陣営も疲労が色濃くうかがえる。特に、回復の手段が限られるアグリアでは、どの隊も動きが鈍ってきていた。遠目に見ても敗戦濃厚であるにも拘わらず、引こうとしない自陣を怪訝に思いながら、ヴィオラに降りるよう指示を出す。  
 いつものような着地はできず、ヴィオラは半ば、地面に衝突するような形で着地した。さすがの異変に私も気付いたが、今は任務が最優先である。私は、目標物を拠点に運んだ。
 待っていたのは不機嫌そうな顔で、椅子に踏ん反り返る部隊長殿だった。状況が思わしくないことに、苛立っていたのだろう。
 「御苦労だったな。それを渡せ」  
 言われなくてもそうするつもりだ。一々喚くな耳触りだ。心の中で罵倒して、顔は何とか笑みを張り付けたまま引き渡す。   一体何が入っているというのか、隊長殿はその物資をいたく大切そうに抱えると、投石器にそれを嵌めこんだ。
「ドラゴンさえやれば、こっちの勝ちなのだ!」
「何を……?」  
 不気味に笑う隊長殿を、私は止めることができなかった。もはや敗戦が決まったも同然のこの状況で、一体何をするというのか。  私は、止めるべきだと思った。この豚野郎が何をしようとしているのかわからないが、余計に事態を悪化させるような気がしたのだ。
「ここは、一旦引いて、態勢を立て直すべきなのでは。ドラゴンも、兵も疲弊している様子。イグニア相手に持久戦を挑むなど、自殺行為です。水辺に囲まれたあの砦を攻略するのは、今の編隊状況では難しいのではありませんか?」
 私の進言を、隊長殿は鼻で笑った。 
「そうか、ではエルロンド。君が伝令に行きたまえ。一旦、兵を引けとな」
「……はっ」
 進言を受け入れられたにも拘わらず、私は嫌な予感がした。あの態度は何だ。物資を手に入れてから、何故そうも強気でいられる?  
 胸騒ぎを感じながらも、上官の命には逆らえない。私は、どこかぐったりとしているヴィオラを起こし、もう一度飛 ぶように命じた。  
 ヴィオラは、私の言葉に応えようと、大きな翼を広げるが、いつものように力強く飛ぶことはできなかった。ふらふらと、あちこち蛇行し、何とか戦場に辿りつく。
 その時だった。自陣から、地の底から響くような声が上がる。
「今ここで攻めねば、いつ攻めるというのだ!」  
 その声と同時に、ヴィオラの頭上に、何かが弧を描いて飛んできた。
 そして、それは丁度両陣営の真ん中辺りに落下し、ぱっくりと二つに割れ、霧状のものがぱあっと辺り一帯に広まった。  そこからは、まさに地獄のようであった。  ドラゴン達が、一斉に苦しみのたうちまわりだしたのだ。騎乗していた騎士も巻き込まれ、ドラゴンの近くにいた兵士も巻き添えを食い、ぺしゃりと潰された。そこらじゅうで血だまりができ、血の雨が降りそそいだ。
 仲間も、敵も、関係なかった。  
 ただただ、ドラゴンが苦しみ、その周囲にあるもの全てが、死んだ。  そして、その上空にいたヴィオラも、「安全な場所に運ぶまで、絶対に力尽きませぬ」と、弱々しく羽ばたくが、ついにそのまま私を庇うようにして、地に落ちた。  
 私には、何が起こったのかわからなかった。  
 分かることと言えば、何故か伝令に行ったはずの私とヴィオラを無視し、部隊長殿が攻撃を仕掛けたということ。その攻撃によって、ドラゴンが死んでいくということ。  
 あの物資は、対竜用の兵器だったのだ。
 死屍累々の状況下にも拘わらず、あの部隊長殿はこう命じられた。
「今こそ反撃の時だ! 進めぇ!」

 ヴィオラの亡骸の側で茫然としていた私は、奴の怒声で現実へと意識を呼びもどした。
 ヴィオラが死んだ。 「我々の勝利は目前だ!」  すぐそこには、馬鹿なことを喚いている豚がいる。立てる兵士など、もはやいない。この地獄の中で立ち上がるものは、修羅か何かだろう。   
――ヴィオラ?
 声にならない声で、私は半身の名前を呼んだ。返事など、あるはずもない。  

何のために、ヴィオラは死んだのだろう。  どうみても、負け戦。  しかし滑稽なことに、勝利を歌う豚が一匹。  
 私は、よろよろと立ちあがると、渾身の力を込めて、部隊長殿の腹を蹴っ飛ばした。巨体があり得ないほど飛び、そのまま地面に這いつくばる。
「貴様! 誰に向って……!」
「黙れ、豚野郎。誰が口を開いていいと言いましたか。家畜の分際で。上官殿はそうやって、泥に塗れているのがお似合いですよ」
 私は奴の脂ぎった顔を、思いっきり蹴っ飛ばした。奴の顎が外れる音がする。
「貴様も、貴様のドラゴンも所詮、捨て駒の分際で何を! 私の勝利の為の駒が! こんなことをして許されると思っているのか!」  
耳触りだった。早く黙らせたくて、もう一度、奴の顔を蹴っ飛ばした。
「上官殿はいつか、所詮、捨て駒と侮ったドラゴンに食まれて、死んでいけばいい。貴方の存在は毒ガスなどよりもよほど悪辣だ。貴方が息をする分だけ、空気が穢れる」  
私はにっこりと笑ってやると、奴の頭を踏みつけた。
「勝利のために捨て駒であれというのであれば、貴殿の方こそ国のために、死ぬべきでしょうね。実力主義のこの国で、貴殿のような豚が息をしているだけで、不快です」  



私は、今回の作戦について騎士長に御報告申し上げた。しかし騎士長は渋い顔をされるのみで、私が望む回答は得られなかった。  あの研究所については、まさに極秘扱いであったため、今回の件を公にするわけにはいかないという。  ふざけている。  あのレダでさえ、勝利のための捨て駒ならば、仕方ないと意見した。  私の絶望感は、誰にもわからないだろう。








 ヴィオラ。私の天使に出会った。この子だけは、アリアだけは絶対に、守ってみせる。



    



【ドラゴンと騎士企画】 一部キャラクターをお借りしています。

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更新しました。http://ncode.syosetu.com/n6782d/

ようやくここまできました。長かったですね。
さて、今回より月読様大活躍になります。





というか、月読と薫くんの攻防、そして月読としての年月に勝てずに、薫としての自我を少しずつ失っていくっていうのが正直今回のメインだったりします。その過程で海鶴が被害にあってしまうわけですよ。

薫は海鶴の事が好きです。
月読様も、同じ時間を共有し、薫と心を共有しているために、海鶴の事が大好きです。ですが月読様の愛情は相当歪んでいるために、同じ愛でも普通の愛とかないわけですよ。

嫌いな奴はとりあえずぶち殺す。気に入らない奴もとりあえずぶち殺す。夢見の巫女を目覚めさせる(夢の中でぶち殺す)お仕事も、喜んでやる。とりあえず、命を奪うことに快楽を覚えている狂人。
好きな奴はとりあえず近くにおいて溺愛、他に目を向けようものならそく監禁。
過去、何人もそれで巫女を孕ませていますが、自分は束縛されるのを嫌っているので、全部あれです。口にするべきではないことを胎児へ行ったりしています。

なんていうか、どうしてこんなに極端なんだこいつ。
kaoru.jpg
かつてかみおさまにいただいた映像を張っておきます。これは、薫イメージで描いてもらったわけですが、多分月読様は同じお顔だけどそうとういってると思うんだよね。薫くんはあんなに純朴な良い少年だったのに、何を間違ってそうなったんだよ月読。まったく、大人げないぞ☆

しかし、マジでまともな人が周りにいなくて可哀想な海鶴である。薄幸の美少女prpr。



神狩りは大体、9~10章くらいで終わらせようと思っているので、もう少しです。がんばります。
今日は私の大事な友人と紫羽様のお誕生日ということで、紫羽様のリクエストにお答えしてやらかしてみようと思います(笑)
どこまでルイリ嬢のイメージを壊さずにできるか分かりませんけれど。


ルイリ嬢×海鶴 夢の対談

目を覚ますと、そこは見知らぬ空間だった。咲き誇る色とりどりの花。それから美しい緑の庭。見知らぬ大輪の華は、異国情緒あふれて目を引く。
 
彼女は確かに、唄に惹かれてきた。
耳に慣れぬ言葉であったが、水晶を転がすような涼やかで、闇夜を優しく照らす淡い月光のように美しい唄は、天を震わせ海鶴の心を掴んで離さなかった。
じっと、庭を見渡す。辺りに人影はない。
ここではなかったのか。見知らぬ土地で、迷ったのか。しかし戻り方も海鶴には分からない。

 
 
「どうしたの? 迷子?」

水晶の鈴が、転がるような音がした。
海鶴は、はっと顔を上げる。
 
息を呑むほど儚く美しい少女が、この身を案じるように手を差し伸べていた。
一目見ただけで、身分の高い方であると海鶴は判断した。
 
あまり見たことのない着物である。広がった裾がひらひらと風に舞ってともすれば脚が見えてしまいそうだ。
触れれば消えてしまうのでは、そんな畏れから、海鶴は差し伸べられた白い手を、ただ凝視するのみで取ろうとはしなかった。
 
警戒心を強め、怯える獣に見えただろうか。彼女は困ったように微笑みを浮かべ、首を傾げた。

「私の言葉は、分かるかしら?」

彼女が声を発する度に、空気が震え、華は色づく。
海鶴は、頬を染めて頷いた。

「分かります」
「良かった」

ほっとして微笑む姿は女神のようで。海鶴はほうっとそんな笑顔に見惚れた。
きっと、自分よりも年上であろう少女であるが、何故こんなに庇護欲をかきたてられるのだろうか。

「私はルイリ。あなたは?」
「海鶴と申します」
「ミツル……聴きなれない名前ね」

海鶴は、るいり、と小さく復唱した。
るいりとおっしゃるのか。美しい響きの名前だ。

「でも、まだ小さいのにしっかりしているのね」
「はあ……そうでしょうか?」
「わたしがミツルちゃんくらいの年の時に、迷子になんてなったらきっとわんわん泣いて、お兄さまに助けを求めていたわ」

るいり様はにこにこしながら、海鶴の髪を撫でる。
優しい手つきに海鶴はどきどきした。

「お兄さまがいらっしゃるのですか?」
「とっても優しくて、素敵なお兄さまよ」

はにかむように語られるるいり様は、本当にお美しい。同性ながら、海鶴は高鳴る鼓動を押さえられなかった。

「羨ましい限りです。私の兄達ときたら、私を山猿呼ばわりするのですよ」
「まあ」

こんなに可愛いのに…と呟かれるるいり様であったが、海鶴は頭をふる。

「可愛さのかけらもない妹を、揶揄してそう呼ぶのでしょう。当たっているので私も敢えて何も言いません」
「本当にそうなのかしら……」
「私は兄達にとって恥ずべき妹なものですから。祭事の時も、私の失敗を間近にして指をさして嗤うくらいですから。わざわざぼろい屋敷を用意させ、そこに私を追いやったのも兄たちです」
「ミツルちゃんは愛されているのね」
「……そうなのだとしたら、気色悪いにもほどがあるわ」

ぼそりと呟けば、るいり様は大輪が咲くように、顔をほころばせた。

「そんな風に言わないであげて。こんなに可愛い妹を前にしたら、うまく言葉がでないのよ」
「まさかそんなこと……」

あるわけがない。あの兄たちに限って。

「わたしの兄も、大概心配性なの。大丈夫だって言っているのにね。あの人については殊更、信用がないの」
「それは、るいり様はこんなにお美しくて儚げで、守って差し上げなければならないからですよ! 変な虫がついては大変ですから」
「虫って……。大丈夫よ。虫はただ、甘い香りに寄ってくるだけで、害はないもの」

確かにるいり様は良い香りがする。甘くて、優しい香りだ。しかし彼女のいう虫と、海鶴の思う虫は多分違う。

「そういう虫ではありませんよ、るいり様」
「?」

わかっていなそうなるいり様に、どう説明していいのか分からず、海鶴は黙り込んだ。
実に心配である。このような儚げな少女に、変な男が寄りつかないようお兄さまとやらにはしっかりしていただかなくてはならない。

「そういえば、お兄さまたちとは、いくつ離れているの?」
「一番上とは十、年の近い兄とは五つ離れています。今年で十五になる妹に、いつまでも口出しするのはやめていただきたいものです」
「え……!」

 
海鶴の言葉に、るいり様は固まった。小首を傾げ彼女の横顔を伺う。

「どうされたのですか?」
「十五歳?」
「はい」
「てっきり……まだ十歳くらいだと思っていたわ。まさか、わたしと二つしか違わないだなんて……」
「そこまで幼く見えましたか」

 
海鶴は肩を落とした。確かに、目の前の美しい少女と見比べれば、見劣りするだろう。体つきも貧相で、子どもに見えてもおかしくはないが、実年齢より五つも下に見られるとは。
るいり様は、落ち込む海鶴に、慌てて付け加える。

「でも、可愛いもの。十歳だって十五歳だって、ミツルちゃんたいして変わらないわ」
「……変わらないですか。そうですよね」

それはそれで哀しいのだ。十でも十五でも大差ないなど、成長の隙もない。
十七になっても、きっとるいり様のように美しくなれないことは分かっているが、彼女のようにたおやかで、穏やかな女性に憧れる。
世の殿方はいつでも、庇護欲をかきたてられる女性が好みだ。
海鶴のような破天荒な娘は、いつの世も身請けの先もない。

「だから私はいつまでたっても誰からも子ども扱いされ、幼馴染からも全く相手にされないのです」
「違うわ。可愛いからつい子ども扱いしてしまうのよ」
「それが嫌です」

ぷうっと頬を膨らませ、ふいっと顔を背ければるいり様はまた笑われた。

「ミツルちゃんは幼馴染に恋しているのね」
「どうでしょうか。恋、というか。心配で放っておけなかったというか……。ぼんやりしているようでいて、時々鋭いことを言ってみたり。無神経なようでいて、細かいところに気付いていたり。振り回されてばかりの、い、いやな奴です」
「大好きなのね、その人のことが」
「ち、ちがっ! 家族みたいなものだからっ。弟みたいっていうか、弟分みたいっていうか……。その、ただ、いつも何も写していない目に、色んなものを見せてあげたかったし。私の見る世界を、奴に見せつけたかったっていうかですね」

何を言っているのか分からず、海鶴は口をつぐむ。
るいり様はそっと長い睫毛を伏せた。

「わたしもね。あの方の痛みを、分かち合いたいと思っているわ。そうね、放っておけば、何をするか分からない危うさに、心配で目が離せなくて。彼は、生き急いでいるの。分からないんだけど、許してほしいと思っているの。けれど絶対に弱みを見せてくれない。わたしは、多分それがとても心配なのだわ。
分かってほしいなんて言った覚えはないと言われそうだけど、わたしはあの方を今なお捕える闇から、すくって差し上げたいの」

どなたのことを言っているのか分からないが、るいり様も気になるお方がいるのだろう。
海鶴は、その方がるいり様に早く救われることを願った。

遠くで、呼び声が聞こえた。
るいり様が振り返るのと同時に、海鶴の身体は彼方の空間へと引き寄せられて、やがて粒子となって消えた。


おわれ。
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